労務相談の返信、入退社の案内、法改正のお知らせ。社労士事務所の仕事には、顧問先への文章が多くあります。生成AIを入れると下書きの時間は減りますが、相談内容には従業員の個人情報や健康状態など、特に慎重に扱うべき情報が含まれます。
この記事では、社労士事務所の日常業務で使えるプロンプトを 10 本、コピーしてそのまま使える形で紹介します。あわせて、入力してよい情報の線引きと、事務所でプロンプトを揃えて使う方法をまとめます。
この記事でわかること
- 労務相談で生成AIを使うときの入力ルール(守秘義務と機微な個人情報)
- 相談対応・手続きの案内・就業規則・法改正・助成金・記録で使えるプロンプト 10 本
- 良いプロンプトを事務所で揃えて使う方法
この記事のプロンプト一覧
| 業務 | プロンプト | 時間が減るところ |
|---|---|---|
| 労務相談 | ① 相談メールへの返信下書き ② 相談の論点整理 | 回答を文章にする時間 |
| 手続きの案内 | ③ 入退社の必要書類の案内 ④ 締め切りのリマインド | 同じ案内を書く時間 |
| 就業規則 | ⑤ 条文を従業員向けに説明 ⑥ 改定の説明(新旧の比較) | 条文を言い換える時間 |
| 法改正・助成金 | ⑦ 法改正のお知らせ ⑧ 助成金の要件チェック | 資料を読み解く時間 |
| 記録・社内通知 | ⑨ 面談メモの要約 ⑩ 従業員向けの制度案内 | 記録と周知の時間 |
使う前に決める 3 つのルール
社会保険労務士には社会保険労務士法第 21 条で秘密を守る義務があります。また、労務相談には健康状態や家族の事情など、特に配慮が必要な個人情報が含まれがちです。使い始める前に、次の 3 つを事務所で決めておきます。
- 個人が分かる情報は入れない — 氏名・会社名・マイナンバー・健康状態の詳細は入力しない。〔A社〕〔従業員B〕に置き換え、相談の判断に必要な事実だけを入れる
- 学習に使わない設定を確認する — ChatGPT なら設定の「データコントロール」で、入力内容をモデルの改善に使わない設定にする。法人向けプランは契約内容を確認する
- 出力は下書きとして扱う — 法令の解釈や手続きの期限は、必ず社会保険労務士が確認する
各 AI の「学習させない設定」の場所は、「士業事務所が生成AIを使う前に決める3つのこと」で画面つきで説明しています。
労務相談
① 相談メールへの返信下書き
回答の方向性を箇条書きで渡し、メールに整えてもらいます。どちらか一方に肩入れした書き方にならないよう、指示に入れておきます。
※入力前に: 会社名・氏名などは〔A社〕〔従業員B〕のように置き換えてください。
あなたは社会保険労務士事務所の職員の文面作成を手伝うアシスタントです。顧問先からの労務相談に対する、返信メールの下書きを作ってください。
<question>
{顧問先からの相談}
</question>
<facts>
{会社の規模、就業規則の該当条文、これまでの経緯}
</facts>
<our_answer>
{担当者が考えている回答の方向性}
</our_answer>
<rules>
- 法令の解釈は断定せず、確認が必要な点を分けて示してください。
- 労働者・会社のどちらかに一方的に肩入れした書き方をしないでください。
- これは社会保険労務士が確認する前の下書きです。
</rules>
<output_format>
1. 返信メール(件名・本文)
2. 担当者向けメモ(確認が必要な点・紛争になりそうな点)
</output_format>② 相談の論点整理
長い相談メールや電話のメモから、論点と追加で聞くべきことを整理します。回答を考える前の段階で使います。
あなたは社会保険労務士事務所のアシスタントです。次の相談内容から、論点と追加で確認すべきことを整理してください。
<consultation>
{相談内容(固有名詞は伏せたもの)}
</consultation>
<output_format>
1. 相談の要点(3行以内)
2. 論点(関係しそうな法令・制度の名前を挙げる。条文番号は書かない)
3. 回答の前に顧問先に確認したいこと
4. 急いで対応すべきかどうかと、その理由
</output_format>手続きの案内
③ 入退社の必要書類の案内
入社・退職の連絡を受けたら、必要な書類と期限を顧問先に案内します。状況(雇用形態、扶養の有無など)を渡して書き分けさせます。
あなたは社会保険労務士事務所の職員です。顧問先に、従業員の{入社/退職}の手続きに必要な書類を案内するメールを書いてください。
<situation>
- 手続き: {入社/退職}
- 日付: {入社日/退職日}
- 雇用形態・所定労働時間: {例: 正社員、週40時間}
- 扶養家族: {有無}
- その他: {例: 前職で雇用保険に加入していた}
</situation>
<rules>
- 必要書類と、事務所への提出期限を箇条書きにしてください。
- マイナンバーはメールで送らないよう、安全な提出方法を案内してください。
- 状況によって必要かどうかが変わる書類は「該当する場合」と明記してください。
</rules>④ 締め切りのリマインド
給与計算の勤怠データ、算定基礎届や年度更新の資料など、毎月・毎年の締め切りを伝えるメールです。前回遅れた顧問先にも角が立たない文面にします。
あなたは社会保険労務士事務所の職員です。顧問先に、資料の提出期限をお知らせするメールを書いてください。
<request>
- 用途: {例: 10月分の給与計算}
- 提出してほしいもの: {一覧}
- 事務所への提出期限: {期限}
- 期限に遅れた場合の影響: {例: 支給日に間に合わない場合がある}
</request>
<rules>
- 責める印象にならないよう、丁寧に書いてください。
- 件名に用途と期限を入れてください。
</rules>就業規則
⑤ 条文を従業員向けにやさしく説明
就業規則の条文を、パート・アルバイトを含む従業員が読める説明文にします。社内掲示や説明会の資料に使えます。
あなたは就業規則を分かりやすく伝える社会保険労務士事務所のアシスタントです。貼り付けた条文を、従業員向けの説明文にしてください。
<article>
{就業規則の条文}
</article>
<audience>
{読む人 例: パート・アルバイトを含む全従業員}
</audience>
<rules>
- 条文に無いことを書き足さないでください。
- 具体的な例を1つ入れてください。
</rules>
<output_format>
1. ひとことで言うと(1行)
2. くわしい説明(300字以内)
3. よくある質問(2問)
</output_format>⑥ 改定の説明(新旧の比較)
就業規則の改定案を顧問先に説明するとき、新旧の違いと理由を整理します。
あなたは社会保険労務士事務所のアシスタントです。就業規則の改定前と改定後の条文を比べ、顧問先の経営者向けに説明を作ってください。
<before>
{改定前の条文}
</before>
<after>
{改定後の条文}
</after>
<reason>
{改定の理由 例: 法改正への対応、運用の実態に合わせる}
</reason>
<output_format>
1. 新旧対照表(変わった箇所だけ)
2. 変更の理由(経営者向けに2〜3行)
3. 従業員への周知で伝えること
</output_format>法改正・助成金
⑦ 法改正のお知らせ
厚生労働省の資料やリーフレットを貼り付けて、顧問先向けのお知らせを作ります。顧問先ごとに必要な対応を書き分けます。
あなたは社会保険労務士事務所の職員です。貼り付けた資料をもとに、顧問先向けの法改正のお知らせを書いてください。
<source>
{厚生労働省の資料・リーフレットの該当部分}
</source>
<client>
{顧問先の業種・規模・雇用形態の構成}
</client>
<rules>
- 資料に書かれていないことを補わないでください。
- 施行日と、顧問先が対応すべきこと(就業規則の改定、労使協定、届出など)を分けて書いてください。
- これは社会保険労務士が確認する前の下書きです。
</rules>⑧ 助成金の要件チェック
最新の公募要領を貼り付けて、顧問先が要件を満たすかを確認する表を作ります。要領に書かれていない点は「要確認」にさせるのがポイントです。
あなたは助成金の申請準備を手伝う社会保険労務士事務所のアシスタントです。貼り付けた公募要領から、顧問先が要件を満たすか確認するチェックリストを作ってください。
<guideline>
{助成金の公募要領(最新版)の該当部分}
</guideline>
<company>
{顧問先の状況(規模、雇用保険の加入状況、実施予定の取り組み)}
</company>
<rules>
- 公募要領に書かれていることだけで判定し、記載が無い点は「要確認」としてください。
- これは社会保険労務士が確認する前の下書きです。
</rules>
<output_format>
1. 要件チェックリスト(満たす/満たさない/要確認)
2. 不足している書類
3. スケジュール(いつまでに何をするか)
</output_format>記録・社内通知
⑨ 面談メモの要約
顧問先との面談の走り書きを、記録と次の対応に整理します。お礼メールの下書きも一緒に作れます。
あなたは社会保険労務士事務所の記録整理を手伝うアシスタントです。顧問先との面談メモを、事務所の記録と次の対応に整理してください。
<memo>
{面談の走り書きメモ}
</memo>
<rules>
- メモに無い内容を推測で足さないでください。
</rules>
<output_format>
1. 面談の要点(5行以内)
2. 顧問先の課題
3. 宿題(誰が・いつまでに)
4. 顧問先へのお礼メール(200字以内)
</output_format>⑩ 従業員向けの制度案内
育児休業や介護休業などの制度を、顧問先の従業員向けに案内する文章を作ります。顧問先の社内掲示やメールで使ってもらえます。
あなたは社会保険労務士事務所のアシスタントです。顧問先の従業員に、社内制度を案内する文章を書いてください。
<system>
{制度の名前と、就業規則・規程の該当部分}
</system>
<rules>
- 規程に書かれていないことを足さないでください。
- 「誰が使えるか」「どう申し出るか」「いつまでに申し出るか」を必ず入れてください。
- 申し出たことで不利益に扱われないことを、規程に書かれている範囲で伝えてください。
</rules>良いプロンプトを事務所で揃えて使う
プロンプトは使い込むほど、事務所の工夫が詰まっていきます。「肩入れしない書き方を指示に入れる」「資料に無いことは要確認にさせる」といった改良は、たいてい 1 人の職員の手元で止まります。共有フォルダの Excel にまとめても、使う瞬間に探しに行くのは手間で、結局使われなくなりがちです。
事務所で揃えるには、置き場所を 1 つにして、使う瞬間に手元に出せるようにすることが大切です。
標準機能で十分な人
- •生成AIを使うのは自分だけで、プロンプトも数本しかない
- •使う AI は 1 つだけで、PC からしか使わない
PasteSync が向いている人
- ✓職員ごとにプロンプトの使い方がバラバラで、事務所として揃えたい
- ✓顧問先への案内文とプロンプトを、同じ場所から呼び出したい
- ✓ChatGPT と Claude(や Gemini)を使い分けている
まとめ
- 労務相談には機微な個人情報が含まれる。固有名詞を伏せ、判断に必要な事実だけを入力する
- 期限・金額・要件は改正される。最新の資料を貼り付け、「書かれている範囲でだけ答える」ように指示する
- 良いプロンプトは事務所で 1 つの置き場所に集め、使う瞬間に手元に出せるようにする