法律事務所の仕事には、相談内容を聞き取って整理する、依頼者に手続きを説明する、進捗を報告する、書面を見直すといった、文章を扱う作業が多くあります。生成AIはこうした作業の下ごしらえで時間を減らせますが、扱う情報は依頼者の秘密そのものです。
この記事では、法律事務所で使えるプロンプトを 10 本、コピーしてそのまま使える形で紹介します。あわせて、守秘義務を守るための入力ルールと、事務所でプロンプトを揃えて使う方法をまとめます。
各 AI の「学習させない設定」の場所は、「士業事務所が生成AIを使う前に決める3つのこと」で画面つきで説明しています。
この記事でわかること
- 法律事務所で生成AIを使うときの入力ルール(守秘義務と利益相反)
- 相談・依頼者対応・書面・事務所運営で使えるプロンプト 10 本
- 良いプロンプトを事務所で揃えて使う方法
この記事のプロンプト一覧
| 業務 | プロンプト | 時間が減るところ |
|---|---|---|
| 相談 | ① 時系列と論点の整理 ② 追加で聞くことの洗い出し | 聞き取りを整理する時間 |
| 依頼者対応 | ③ 方針の説明文 ④ 進捗の報告 ⑤ 期日の案内 | 説明・報告を書く時間 |
| 書面 | ⑥ 誤字・表記ゆれチェック ⑦ 証拠資料の一覧作成 | 見直しと整理の時間 |
| 事務所運営 | ⑧ 問い合わせへの返信 ⑨ 相談受付の案内 ⑩ 新人向けの業務説明 | 一から書く時間 |
使う前に決める 3 つのルール
弁護士には、弁護士法第 23 条で職務上知り得た秘密を保持する義務があります。生成AIのサービスに文章を入力すると、その内容は事務所の外に送られます。使い始める前に、次の 3 つを事務所で決めておきます。
- 個人・事件が分かる情報は入れない — 依頼者・相手方の氏名、会社名、住所、事件番号は入力しない。〔依頼者A〕〔相手方B〕に置き換え、検討に必要な事実だけを入れる
- 学習に使わない設定を確認する — 個人向けのアカウントでは、入力内容を学習に使う設定をオフにする。法人向けプランは契約内容を確認する
- 判断は弁護士が行う — 法令・判例の調査や法的な評価は AI に任せない。AI に頼むのは、事実の整理、説明文の下書き、表記のチェックまで
相談
① 相談内容の時系列と論点の整理
聞き取りのメモを、時系列の表と検討すべき論点に整理させます。法的な結論は書かせず、「検討が必要な点」として挙げさせるのがポイントです。
※入力前に: 氏名・会社名・住所・事件番号は〔依頼者A〕〔相手方B〕のように置き換えてください。
あなたは法律事務所の事務作業を手伝うアシスタントです。相談者から聞き取った内容を、弁護士が検討しやすいように時系列と論点に整理してください。
<memo>
{聞き取りのメモ}
</memo>
<rules>
- メモに無い事実を推測で足さないでください。
- 法的な結論は書かず、検討が必要な点として挙げてください。
- これは弁護士が確認する前の下書きです。
</rules>
<output_format>
1. 時系列の表(日付/出来事/根拠となる資料)
2. 当事者の関係
3. 検討が必要な論点
4. 追加で確認したい事実と資料
</output_format>② 追加で聞くことの洗い出し
初回相談のメモから、次回までに確認すべき事実と、依頼者に用意してもらう資料を洗い出します。
あなたは法律事務所のアシスタントです。初回相談のメモから、次回までに確認すべきことを整理してください。
<memo>
{初回相談のメモ(固有名詞は伏せたもの)}
</memo>
<rules>
- 依頼者がはい/いいえで答えられる質問を先に置いてください。
- 資料は「何を・どこで手に入るか」まで書いてください。
</rules>
<output_format>
1. 依頼者に確認したい事実(質問の形で)
2. 用意してもらいたい資料
3. 期限が迫っている可能性があるもの(時効・申立期限など、確認が必要な点として)
</output_format>依頼者への対応
③ 方針の説明文
弁護士が決めた方針と見通しを、依頼者が分かる言葉で説明する文章の下書きにします。
あなたは法律の手続きをやさしく説明するのが得意な法律事務所のアシスタントです。弁護士が決めた方針を、依頼者向けの説明文の下書きにしてください。
<policy>
{弁護士が決めた方針・見通し(箇条書き)}
</policy>
<client>
{依頼者の状況 例: 法律の手続きがはじめての個人}
</client>
<rules>
- 見通しを断定せず、弁護士が書いた範囲で書いてください。
- 専門用語には短い説明を付けてください。
- これは弁護士が確認する前の下書きです。
</rules>
<output_format>
依頼者向けの説明文(400字以内)と、よくある質問 2 問
</output_format>④ 進捗の報告
動きがない時期の報告ほど、依頼者の安心につながります。経過と次の予定を短くまとめます。
あなたは法律事務所の職員です。依頼者に事件の進捗を報告するメールを書いてください。
<status>
- これまでの経過: {日付と出来事}
- 今後の予定: {次の期日・手続き}
- 依頼者にお願いしたいこと: {なし/内容}
</status>
<rules>
- 動きがない場合も、待っている理由と次の見込みを書いてください。
- 5〜8 行の短い本文にしてください。
</rules>⑤ 期日の案内
期日の日時・場所・出席の要否・準備してほしいことを、依頼者向けに案内します。
あなたは法律事務所の職員です。依頼者に次回の期日を案内するメールを書いてください。
<hearing>
- 日時: {日時}
- 場所: {裁判所名・部/Web 会議}
- 依頼者の出席: {必要/不要}
- 準備してほしいこと: {内容}
</hearing>
<rules>
- 出席が不要な場合も、その旨をはっきり書いてください。
- 件名に期日の日付を入れてください。
</rules>書面
⑥ 誤字・表記ゆれのチェック
書面の内容には手を入れさせず、誤字・脱字・表記ゆれ・日付や金額の食い違いだけを探させます。
あなたは法律事務所の書面の校正を手伝うアシスタントです。貼り付けた書面から、誤字・脱字・表記ゆれ・日付や金額の食い違いを探してください。
<document>
{書面の本文(固有名詞は伏せたもの)}
</document>
<rules>
- 内容(主張や法的評価)には手を入れず、表記の確認だけをしてください。
</rules>
<output_format>
表: 箇所/気になる点/修正案
見つからなかった場合も「見つからなかった」と書いてください。
</output_format>⑦ 証拠資料の一覧作成
依頼者から受け取った資料のメモから、証拠の一覧の下書きを作ります。
あなたは法律事務所のアシスタントです。受け取った資料のメモから、資料の一覧表の下書きを作ってください。
<materials>
{資料のメモ(例: 2026年3月の契約書の写し、相手方とのメール 12 通、写真 5 枚)}
</materials>
<rules>
- メモに書かれた資料だけを並べてください。
- 作成日が分からないものは「不明」と書いてください。
</rules>
<output_format>
表: 番号/資料の名前/作成日/作成者/原本か写しか/メモ
</output_format>事務所運営
⑧ 問い合わせへの返信
ホームページからの問い合わせに、相談の予約へつなげる返信を書きます。メールで法的な判断を示さないこと、利益相反の確認前に詳しく聞き返さないことを指示に入れています。
あなたは法律事務所の問い合わせ対応を手伝うアシスタントです。問い合わせに対する返信の下書きを作ってください。
<inquiry>
{問い合わせの本文}
</inquiry>
<our_service>
{取扱分野、相談料、相談の受け方}
</our_service>
<rules>
- メールで法的な判断を示さず、相談の予約につなげてください。
- 利益相反の確認が済むまで、相手方の名前などを詳しく聞き返さないでください。
- これは弁護士が確認する前の下書きです。
</rules>
<output_format>
1. 返信メール(件名・本文)
2. 相談の前に確認したいこと(箇条書き)
</output_format>⑨ 相談受付の案内
相談の日時・持ち物・費用を、はじめての方向けに案内します。
あなたは法律事務所の職員です。法律相談の予約が入った方に、案内のメールを書いてください。
<booking>
- 日時: {日時}
- 場所: {事務所/オンライン}
- 相談料: {金額と時間}
- 持ってきてほしいもの: {資料、時系列のメモ、本人確認書類}
</booking>
<rules>
- はじめて法律事務所に相談する方にも分かる言葉で書いてください。
- キャンセルの連絡方法を書いてください。
</rules>⑩ 新人向けの業務説明
事務所のやり方を、新しく入った職員向けの説明にします。所内マニュアルの下書きにも使えます。
あなたは法律事務所の教育担当です。新しく入った職員向けに、次の業務の説明を書いてください。
<topic>
{例: 新規の問い合わせを受けたときの流れ}
</topic>
<our_way>
{事務所でのやり方、注意点、よくあるミス}
</our_way>
<output_format>
1. この業務の目的(2行)
2. 手順(番号つき)
3. よくあるミスと防ぎ方
4. 分からないときに聞く相手
</output_format>良いプロンプトを事務所で揃えて使う
「推測で事実を足さない」「法的な結論は書かせない」「利益相反の確認前に聞き返さない」。こうした指示は、事務所の全員が同じプロンプトを使ってはじめて効果が出ます。良いプロンプトが個人のメモに散らばっていると、使う瞬間に探す手間がかかり、結局は自己流に戻りがちです。
標準機能で十分な人
- •生成AIを使うのは弁護士本人だけで、プロンプトも数本しかない
- •使う AI は 1 つだけで、PC からしか使わない
PasteSync が向いている人
- ✓弁護士と事務職員で、同じプロンプト・同じ文面を使いたい
- ✓依頼者への連絡文とプロンプトを、同じ場所から呼び出したい
- ✓外出先や裁判所でもスマホから文面を貼りたい
まとめ
- 依頼者・相手方の氏名や事件番号は入れない。置き換えて、検討に必要な事実だけを入力する
- AI に頼むのは事実の整理・説明文の下書き・表記のチェックまで。法的な判断は弁護士が行う
- 問い合わせの段階では、利益相反の確認が済むまで詳しく聞き返さない
- 良いプロンプトは事務所で 1 つの置き場所に集め、使う瞬間に手元に出せるようにする